私たちは、環境・資源・エネルギー・人口・食糧といった問題のみならず、貧困や平和、人権、ジェンダーなど多くの問題によって、持続不可能な危機的状況に直面しています。これらの諸問題は互いにつながりのある相互不可分の関係にあり、グローバリズムの進行に伴いより深刻になってきています。私たちの暮らす地域が抱えている多様な問題もこれらの問題と密接にかかわっています。そしてこれらの問題を解決し、将来にわたって持続可能な社会の実現に向けた考え方として「持続可能な開発」が提起されました。私たちは自らの暮らしと様々な事象・問題とのつながりを意識化し、持続可能な社会づくりに主体的に参加することが求められています。
このような背景のもと、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」において、私たちは「国連ESD(持続可能な開発のための教育)の10年」を日本政府と共に提案し、2003年から取り組んできました。ESDは持続可能な社会の担い手を育てることであり、「持続可能な開発」の概念をあらゆる教育・学習の中に組み込み、教育の再方向づけを行うことです。
2014年に日本で行われる「国連ESDの10年」の最終年会合を、ESDの10年の提案国として、よりESDらしく地球市民主体の「世界の祭典」にすべく、私達は航海に出ました。私たちが乗船したのが、産・公・学・民が一体となって創った共通の船「ESDの10年・地球市民会議」です。
2009年の航海では、ESDの実践や促進には、多様な主体による「対話」と「交流」の場づくりやコミュニケーションの仕組みづくりが重要であることを確認し、「市民発の政策提言活動」を行う私たちの社会的使命を共有することができました。
2010年の航海では、ESDを積極的に展開するアジアの仲間達との実践的な情報交流と連帯の機運が創発され、私たちが目指す「世界の祭典」の理念と展望を、アジアの仲間達と深く共有することができました。
2011年、今回の航海では、「ESDの10年最終年会合」の成功に向けた、日本のイニシアティブ形成や多様なステークホルダーの主体的な参加の仕組づくりを討議し深め、「ESDの10年最終年会合」を、アジア・世界とのつながりの中でオールジャパンによる「世界の祭典」にすることの重要性を確信することができました。
本年の航海の前、3月11日に未曾有の東日本大震災が発生しました。原子力発電所事故を含めた今回の災害に直面し、防災・減災教育の役割はもちろん、安全・安心で持続可能な暮らしというESDの本質について深く思いをめぐらすこととなりました。東日本大震災の復興プロセスと共に、私たちの航海は続くことを乗船した全ての仲間と確認したいと思います。
この航海の乗船者は、最終年に向けて、地域の多様性をベースにあらゆるステークホルダーが連携・協働したESD推進の仕組みづくりに取り組んできています。同時に、最終年に向けて、提唱国、ホスト国としての役割を果たすべくこの航海に乗り出しました。気候変動/自然災害/生物多様性/持続可能な生産と消費/持続可能な地域づくり/歴史文化遺産といったESDの主要テーマに果たす日本のイニシアティブに、世界の期待と眼が注がれています。
現在、私たちの航海は、ユネスコによる「ESDの10年最終年会合」の形式と内容を討議するタイミングを迎えています。また、開催都市を決定するタイミングにも直面しています。いよいよ「ESDの10年・世界の祭典」の実施計画を構築する大切な航海を準備する段階となりました。「政策を提言」する航海から、「プロジェクトを実現」する航海への新たな船出です。
私たちは、これまで準備してきた「世界のRCEとの連帯」「世界と全国のユネスコスクールの学び合い」「NGO・NPOの多様で多彩な連携」「企業の積極的なESDへの取組み」「開催都市の主体的取組み」そして、「身近なIT技術によるESD実践の共有」という事業化テーマをさらに深めると共に、国連・ユネスコ・日本政府および開催都市との力強い信頼関係を構築していきたいと思います。
「ESDの10年・地球市民会議」号の航海を、多様で多彩なステークホルダーとの連携・連帯でさらに継続・発展させていきましょう。